岩国市長 空母艦載機移駐容認を表明


(6月岩国市議会での福田岩国市長の艦載機受入れ表明の全文おこしです。)

空母艦載機の国飛行場への移駐につきましては、本年1月20日、国から具体的な移駐に係るスケジュールが示されたことから、市において、基地対策の基本方針及び米軍再編に対する基本姿勢、また、これまで国と協議を行ってきた安心・安全対策や地域振興策の進捗状況、国への要望事項などの対応状況を整理し、去る5月21日、23日に市内4か所での住民説明会、5月31日に市議会全員協議会において説明させていただき、市民や議員の皆様からそれぞれのご御意見を伺ったところでございます。

また、本定例会の一般質問においても、様々な観点からご質問をいただき、これに答弁をさせていただきました。

これまでも申し上げておりますが、空母艦載機の移駐については、これまでの成果や国との協議、皆様からのご意見を踏まえ、総合的に判断し、6月市議会定例会の会期中に、市の方針を表明する旨、お示ししてきたところであります。

こうした中、本日、6月市議会定例会も最終日を迎えました。

市においては、昨日(6月22日)及び本日(6月23日)の2回、市の重要な政策の方針を決定する会議である「岩国市政策戦略会議」を開き、空母艦載機の移駐について、最終的な判断を行い、方針を決定したところであります。

政策戦略会議では、各判断材料の達成状況、成果などに加え、市民や議員の皆様からいただいた様々なご意見を総合的に判断し、また、多くの市民のご理解が得られるかといった観点からも審議を行ったところであります。

結論を申し上げますが、空母艦載機の岩国飛行場への移駐につきましては、審念熟慮した結果、私は、これを「受け入れる」ことといたします。

米軍再編問題に関して、ここに至るまでの経緯、またその意義を考えますと、「受け入れ」という言葉の重みやその中に込められた思いは、一言で言い尽くせるものではありません。

米軍再編の目的は厳しい安全保障環境の中で、抑止力を維持し、戦争を回避することで、わが国の安全を保障するとともに、国際的な平和と安定を維持する措置であると認識しています。

本定例会の一般質問においても、多くの議員からご質問がございましたが、日本が置かれた昨今の安全保障環境、特に北朝鮮の弾道ミサイルの発射事案などの情勢を考えれば、日米同盟の結束がこれまで以上に重要な時であることは誰もが認めるところと思います。

わたしには、米軍基地の所在する自治体の長として、住民の安心や安全を確保し、良好な生活環境を維持するという責務もあり、これを両立させるための最良の選択がどこにあるのか、葛藤し、苦悩したこともございます。

基地の存在そのものを、日本全体の安全保障の観点を無視して、一面的に「負担」とか「犠牲」とかの概念で定義するところに基地問題の難しさがあると感じております。

今回、私に課せられた判断は、いわば「宿命」であったのかもしれませんが、同じく市民の代表である岩国市議会の多くの議員の皆様のご理解とご支援なくして、今回の判断はできなかったものと思っております。

 

かつて、平成18年5月、米軍再編の日米ロードマップの最終報告が示された当時、岩国市は、再編問題に端を発し、新市庁舎補助金、民間空港の開港、愛宕山地域開発に係る問題や財政の健全化など、多くの問題が山積しておりました。

山口県との協議や国との交渉も暗礁に乗り上げ、市政が停滞し、市民の間に閉塞感や先行きの不安定感が蔓延する状況でありました。

そうした中、私は、このままでは岩国市が衰退してしまうという危機感から、衆議院議員の職を辞し、市長選挙に立候補することを決断いたしました。

市政は、実際の取り組みにおいて、実効性が確保できるかどうかが重要であり、自治体の役割は、具体的に住民福祉の増進を図り、現実に市民の幸福を実現することが基本であると考えております。

私のこうした姿勢は、その後においても、多くの市民の皆様の負託を得て、変わることなく、今に至っております。

空母艦載機の移駐については、市が是非にと誘致したものではありませんが、昨今の我が国の安全保障環境を考えると、多くの国民は、日米安全保障体制の下で、在日米軍と自衛隊の連携による抑止力の必要性を理解しているものと思います。

外交や防衛政策は国の専管事項でありますが、私は、国との信頼関係を維持しながらも、市民の安全安心を守る立場として、時に、国や米軍と、毅然として向き合っていかなければならないとの思いを強くしているところであります。

また、空母艦載機の移駐は、岩国市だけでなく、和木町や周防大島町にも影響が及ぶことから、両自治体とは、国への要望等において密接に連携し、対処してまいりました。

岩国基地周辺の安心安全対策等については、移駐後においても、引き続き、和木町、周防大島町、そして山口県と連携して取り組んでいく必要があると考えております。

基地が存在する限り続く様々な課題に対しては、これからも市民の声に耳を傾け、議会のご意見を伺いながら、また、国に対しても言うべきことは言うをいう姿勢で対処し、引き続き、市民の不安が少しでも解消されるよう、全力を傾注してまいります。

なお、今後につきましては、山口県及び周辺自治体とも協議をした上で、国へ回答したいと考えております。以上で終わります。

6月23日 岩国市議会にて  福田良彦岩国市長